「テスト勉強しなきゃいけないのに、ついゲームをしてしまった…」 「みんなが並んでいるお店だから、きっと美味しいはずだ!」 「あの人は優しそうだから、悪い人じゃないはず」
日常でこんなふうに思ったり、行動したりしたことはありませんか? あとになって「なんであんなことしちゃったんだろう」と後悔するのは、あなたの頭が悪いからではありません。 実はこれ、脳が勝手に行う「ショートカット(近道)」のせいなのです。
この脳のショートカットのくせのことを、専門用語で「認知(にんち)バイアス」と呼びます。 今日紹介する本『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』は、私たちの判断を狂わせる「60種類の心のクセ」を事典形式で教えてくれる一冊です。
「自分は騙されないから大丈夫!」と思っている人ほど、実は一番危ないかもしれません。 この本を読めば、世の中にあふれるフェイクニュースや詐欺(さぎ)、そして自分自身の思い込みから身を守るための「賢いメガネ」を手に入れることができますよ。
さあ、不思議な「脳のクセ」の世界をのぞいてみましょう!
1. そもそも「認知バイアス」ってなに?
まず最初に、「認知バイアス」という言葉の意味を簡単に説明します。
脳は「サボりたがり」なスーパーコンピューター
私たちは毎日、ものすごい量の情報を見たり聞いたりしています。 テレビ、YouTube、SNS、学校や会社の会話……。これら全てを真剣に考えて処理していたら、脳みそがパンクしてしまいますよね。
そこで脳は、エネルギーを節約するために「ショートカット(近道)」を使います。 「過去にこうだったから、今回もこうだろう」「みんながそう言っているから、正しいだろう」というふうに、大まかなパターンで素早く判断を下すのです。
この機能は、原始時代に敵から逃げる時には役に立ちましたが、複雑な現代社会では、時に「思い込み」や「勘違い」を引き起こしてしまいます。 これが「認知バイアス」の正体です。
2. 【論理のワナ】選択肢は2つだけじゃない!
この本では、バイアスを3つのグループに分けて解説しています。まずは「論理的(考え方)」なバイアスから、よくある失敗を見てみましょう。
「二分法の誤謬(ごびゅう)」:白か黒か?
例えば、壺(つぼ)を売りに来た怪しい商人に、こんなことを言われたとします。 「この壺を買えば、あなたは幸せになれます。買わなければ、あなたは不幸になります」
こう言われると、多くの人は「不幸になりたくないから、買うしかないのかな…」と焦ってしまいます。 でも、ちょっと待ってください。本当に選択肢はその2つだけでしょうか?
- 壺を買っても不幸になるかもしれない。
- 壺を買わなくても、幸せになれるかもしれない。
この隠された選択肢が見えなくなってしまうのが、「二分法(にぶんほう)の誤謬」です。 「賛成か反対か」「敵か味方か」「勝ちか負けか」。 世の中はそんなに単純ではありません。追い詰められた時ほど、「第3の道はないかな?」と探すクセをつけましょう。

3. 【認知のワナ】「あと少しで当たる!」の勘違い
次は、私たちの「感覚」や「確率」に関するバイアスです。これはギャンブルやお小遣いの無駄遣いに関係します。
「ギャンブラーの誤謬」:運の流れなんてない
コイン投げを想像してください。 「表、表、表、表」と4回連続で「表」が出ました。 さて、次は「表」と「裏」、どっちが出る確率が高いと思いますか?
多くの人は「そろそろ裏が出るはずだ!」と考えます。 パチンコやスロットでも、「これだけハズレが続いたから、次は大当たりが来るはずだ」とお金をつぎ込んでしまう人がいます。
でも、確率は常に「2分の1(50%)」です。 コインや機械には記憶がないので、「さっき表だったから次は裏にしてやろう」とは考えません。 「流れ」があるように感じるのは、人間の脳が勝手に作り出したストーリーなのです。
4. 【社会のワナ】「みんな」って誰のこと?
最後は、人間関係や集団の中で起こるバイアスです。SNSを使う現代人が一番気をつけたいポイントです。
「バンドワゴン効果」:行列ができるラーメン屋の秘密
お祭りで、2つの屋台が並んでいます。
- A店:誰も並んでいない。
- B店:大行列ができている。
あなたはどちらの焼きそばを買いたいですか? ほとんどの人が「B店」を選びます。「みんなが並んでいる=美味しいに違いない」と思うからです。 これを「バンドワゴン効果」と言います。パレードの先頭の楽隊車(バンドワゴン)にみんながついていく様子から名付けられました。
でも、実はB店の味は大したことがなくて、ただ単に「作るのが遅いから列ができているだけ」かもしれません。 SNSの「いいね」の数や、流行の商品も同じです。 「みんなが持っているから欲しい」のか「本当に自分が良いと思ったから欲しい」のか、一度立ち止まって考えてみましょう。
「ハロー効果」:見た目にダマされるな
「ハロー(後光)」とは、仏様などの後ろにある光のことです。 ある人が「すごい特徴(例:イケメン、高学歴、有名人)」を持っていると、その人の性格や能力まですべて素晴らしく見えてしまう現象です。
- イケメンの詐欺師は、なぜか「誠実そう」に見える。
- 字がきれいな人のレポートは、内容も賢そうに見える。
目立つ特徴(後光)に目がくらんで、その人の本質が見えなくなってしまうのです。 「見た目が良いからといって、中身も良いとは限らない」と肝に銘じておきましょう。

5. 賢い人ほど陥る?「ダニング=クルーガー効果」
「私、全然できないんで…」と言う人に限ってすごく優秀だったり、逆に「俺に任せろ!」と言う人に限って失敗したりすることはありませんか?
能力が低い人は、「自分に何ができていないか」さえ分からないため、自分を過大評価してしまう傾向があります。これを「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。 逆に、本当に能力が高い人は「上には上がいる」ことを知っているため、自信なさげに見えることがあります。
「自分は絶対に正しい!」「論理的に考えているから大丈夫!」と自信満々の時こそ、実はバイアスの罠にはまっているかもしれません。
6. この本を読むメリット・デメリット
『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』を読むことで、どんな変化があるのでしょうか。
| メリット(得られること) | デメリット(注意点) | |
|---|---|---|
| 効 果 | ● 騙されにくくなる:詐欺や広告の嘘に気づけるようになります。 ● 人間関係が良くなる:「あの人が怒っているのは性格のせいじゃなくて、状況のせいかも?」と冷静になれます(基本的帰属の誤り)。 ● 無駄遣いが減る:サンクコストやバンドワゴン効果を知ることで、本当に必要なものにお金を使えます。 | ● 考えすぎてしまう:何でもかんでも「これはバイアスだ!」と疑いすぎて、決断が遅くなるかもしれません。 ● 相手を分析してしまう:友達との会話で「それは〇〇バイアスだよ」と指摘しすぎると、嫌われるので注意しましょう(知識の呪縛)。 |
7. まとめ:自分の脳を「メタ認知」しよう
ここまで、代表的なバイアスを紹介してきました。 最後に、これらに対抗するための最強の武器を教えましょう。 それは「メタ認知(客観的に自分を見る力)」です。
自分の心を、もう一人の自分が天井から見下ろしているイメージを持ってください。 「おっと、今私は『みんなが買ってるから欲しい』と思ったぞ。これってバンドワゴン効果かな?」 そう気づくだけで、バイアスの力は弱まります。
【今日からできる3つのアクション】
- 「証拠はある?」と自問する:思い込みで決めていないか確認しましょう。
- 「反対の意見」も探す:自分の好きな情報ばかり集める「確証(かくしょう)バイアス」を防ぎましょう。
- 一晩寝かせる:感情が高ぶっている時の判断は間違いが多いです。時間を置きましょう。
この本には、他にも「予言が当たったように感じる理由」や「幽霊が見える仕組み」など、全部で60個もの面白い心理現象が載っています。 事典形式なので、どこから読んでも楽しめます。
「自分の脳の取扱説明書」を手に入れて、情報の海を賢く泳いでいきましょう!
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。 あなたの毎日が、賢い選択でもっと自由で楽しいものになりますように!

- Q心理学や論理学の難しい知識がなくても読めますか?
- A
はい、全く問題ありません。 本書は「事典」というタイトルですが、堅苦しい教科書ではありません。身近な「あるある」事例やイラストを使って、一つひとつの用語を非常に分かりやすく解説しています。
- Q続編(行動経済学・統計学・情報学編)とどちらから読むべきですか?
- A
まずは本書(青い表紙)からがおすすめです。 本書が「基礎編」として論理学や認知科学の基本を押さえているのに対し、続編(黄色の表紙)はより専門的な「応用編」となっています。まずは本書で基礎体力をつけるのが良いでしょう。
- Q子供向けに見えますが、大人のビジネスの現場でも役立ちますか?
- A
はい、会議やプレゼンの場ですぐに使えます。 「なぜ会議で誤った決定がなされるのか(集団浅慮)」や「なぜデータを見誤るのか」といった事例は、ビジネスパーソンこそ知っておくべき必須教養として厳選されています。


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